営業メールを送り、相手から返信が来た。
これは、とても大きな一歩です。
営業メールは、送れば必ず返事が来るものではありません。
その中で返信が来たということは、少なくとも相手がメールを読み、何らかの興味を持った可能性があります。
ところが、せっかく返信が来ても、その後の対応が遅れたり、次の連絡を忘れたりして、商談につながらない会社があります。
問題は、営業メールの文章ではありません。
返信が来た後の管理にあります。
今回は、返信が来た見込み客を取りこぼす会社に共通する問題と、簡単にできる改善方法を紹介します。
返信が来たら、営業は成功なのか
営業メールに返信が来ると、
「興味を持ってもらえた」
「これで仕事につながるかもしれない」
と安心してしまいます。
しかし、返信はゴールではありません。
営業の入口です。
例えば、相手から次のような返信が来たとします。
「資料を拝見しました。少し興味があります」
これは、とても良い反応です。
しかし、この返信に3日後に返したらどうでしょうか。
相手はすでに別の会社にも相談しているかもしれません。
あるいは、返信したこと自体を忘れているかもしれません。
せっかく興味を持ってくれたのに、こちらの対応が遅いことで、気持ちが冷めてしまいます。
返信が来た後こそ、早く、丁寧に対応する必要があります。
共通点1 返信を後回しにする
見込み客を取りこぼす会社の一つ目の共通点は、返信を後回しにすることです。
小さな会社では、社長が営業だけをしているわけではありません。
現場に出る。
見積もりを作る。
電話に出る。
請求書を確認する。
社員の相談に乗る。
毎日、さまざまな仕事があります。
そのため、見込み客からメールが来ても、
「あとで落ち着いて返そう」
と考えてしまいます。
しかし、あとで返そうと思ったメールほど、忘れやすいものです。
翌日になり、数日が過ぎ、気がついたときには返信しにくくなっています。
営業では、完璧な文章を作ることより、早く反応することのほうが大切な場合があります。
すぐに詳しい回答ができないときは、まず短く返します。
例えば、
「お問い合わせありがとうございます。内容を確認し、本日中に改めてご連絡いたします」
と送るだけでも、相手は安心できます。
すべてをその場で解決しなくても構いません。
まず、返信を受け取ったことを伝えることが大切です。
共通点2 相手が何に興味を持ったのか記録していない
二つ目の共通点は、相手の興味を記録していないことです。
営業メールでは、複数のサービスを案内することがあります。
例えば、
- ホームページ制作
- 営業管理
- 採用支援
- 印刷物制作
- AI活用支援
などです。
相手から返信が来たとき、
「ホームページの更新について聞きたい」
「採用ページについて相談したい」
「営業管理の仕組みに興味がある」
など、興味を持った部分が書かれていることがあります。
ところが、その内容を記録していないと、後日あらためて連絡するときに分からなくなります。
メールを探せば分かるかもしれません。
しかし、毎回過去のメールを探すのは面倒です。
時間が空くほど、
「この会社には何を提案していたのか」
「どんな悩みがあったのか」
が分からなくなります。
その結果、相手に合わない案内を送り、せっかくの興味を失わせてしまいます。
見込み客から返信が来たら、最低限、次の内容を残します。
- 相手が興味を持った内容
- 困っていること
- 次に確認すること
- 次回連絡日
長い文章を書く必要はありません。
「採用ページに興味。高校新卒採用で困っている。来週火曜日に電話」
この程度でも十分です。
共通点3 次に何をするか決まっていない
三つ目の共通点は、返信後の次の行動が決まっていないことです。
相手から、
「一度、詳しい話を聞きたいです」
と返信が来たとします。
こちらが、
「ありがとうございます。よろしくお願いいたします」
とだけ返したら、どうなるでしょうか。
相手も、次に何をすればよいのか分かりません。
電話を待つのか。
日程を送るのか。
資料が届くのか。
オンラインで打ち合わせるのか。
話が止まってしまいます。
返信には、次の行動を一つ入れることが大切です。
例えば、
「30分ほどオンラインでご説明できればと思います。来週の火曜日午後、または木曜日午前はいかがでしょうか」
と提案します。
相手が選びやすいように、具体的な候補を出します。
「ご都合のよい日を教えてください」
だけでは、相手が予定を考えなければなりません。
候補日を二つ出したほうが、返事がしやすくなります。
共通点4 見積書や資料を送って終わる
見込み客から相談を受け、見積書や資料を送った。
ここで営業が終わったと思ってしまう会社があります。
しかし、資料を送っただけでは、相手が見たかどうか分かりません。
見積書を開いていないかもしれません。
内容は見たものの、社内で相談中かもしれません。
分からない点があるものの、質問するほどではないと思っている可能性もあります。
資料送付後に連絡しないと、相手から見ると、
「本当に仕事を受けたいのだろうか」
「送って終わりなのだろうか」
と感じることもあります。
資料を送ったら、次の確認日を決めます。
例えば、
「本日、資料をお送りしました。来週水曜日ごろに、ご不明な点がないか確認のご連絡を差し上げます」
と伝えておきます。
こうすれば、後日連絡しても突然ではありません。
相手も、
「来週また連絡が来る」
と分かります。
共通点5 すべての見込み客を同じように扱う
返信が来た相手は、全員が同じ状態ではありません。
すぐに依頼したい人もいれば、情報を集めているだけの人もいます。
数か月後に検討したい人もいます。
例えば、次の三つの返信は意味が違います。
「来月までにホームページを作りたい」
「まず費用だけ知りたい」
「今すぐではありませんが、今後の参考にしたい」
すべての相手に同じ営業をすると、対応がずれてしまいます。
すぐ依頼したい人には、早く打ち合わせを提案します。
費用を知りたい人には、料金の目安や違いを説明します。
今後の参考にしたい人には、無理に商談を迫らず、数か月後に役立つ情報を送ります。
相手の温度に合わせる必要があります。
営業管理では、見込み客の状態を分けておくと便利です。
例えば、
- すぐ相談したい
- 検討中
- 情報収集中
- 時期未定
- 今回は見送り
といった状態です。
難しい言葉を使う必要はありません。
見ればすぐに分かる名前にすることが大切です。
共通点6 担当者しか状況を知らない
小さな会社では、営業を担当している人だけが、見込み客の状況を知っていることがあります。
社長のメールの中にしか情報がない。
担当者の頭の中にしか情報がない。
手帳にだけメモがある。
この状態は危険です。
担当者が休んだとき、誰も状況が分かりません。
電話が来ても、
「担当者でなければ分かりません」
となってしまいます。
また、担当者自身も、すべての相手を覚えていられるわけではありません。
会社名、相談内容、見積金額、次回連絡日を一か所にまとめておけば、ほかの人でも確認できます。
大きな営業システムを入れる必要はありません。
最初はGoogleスプレッドシートでも十分です。
重要なのは、情報を特定の人の頭の中だけに置かないことです。
共通点7 断られるのが怖くて連絡できない
見積書を送った後、返事が来ない。
そのとき、
「断られたら嫌だ」
「催促しているように思われそうだ」
と考え、連絡できなくなることがあります。
これは営業が苦手な人に多い悩みです。
無理に売り込む必要はありません。
しかし、確認しないまま放置すると、相手も連絡しにくくなります。
例えば、次のように連絡できます。
「先日お送りした資料について、ご不明な点はございませんでしょうか。検討時期が先になる場合も、ご都合のよい時期を教えていただけましたら、その時期に改めてご連絡いたします」
これなら、契約を迫っていません。
相手の予定を確認しているだけです。
営業のフォローは、無理に買ってもらうことではありません。
相手が判断しやすいように、必要な情報を渡すことです。
「返信が来た相手に何度も連絡すると嫌われる」という反対意見
見込み客を追いかけすぎると、しつこい営業だと思われる。
これは正しい心配です。
相手から返事がないのに、毎日のように電話やメールをすれば、迷惑になります。
ただし、まったく連絡しないことが正解ではありません。
問題は、連絡することではなく、連絡の仕方です。
次の三つを守ると、嫌がられる可能性を減らせます。
相手と約束した日に連絡する
「来週ご連絡します」と伝えてから連絡すれば、突然の催促になりません。
売り込みではなく確認をする
「契約してください」ではなく、「ご不明な点はありませんか」と聞きます。
相手に断る選択肢を渡す
「今回は見送りの場合も、お知らせいただければ今後の連絡を控えます」と書けば、相手も返事をしやすくなります。
営業は、何度も押すことではありません。
相手と次の約束を決め、その約束を守ることです。
返信が来た後に残すべき情報
見込み客から返信が来たら、次の項目を記録します。
会社名
どの会社からの返信かを記録します。
担当者名
誰と話しているのかを記録します。
返信日
いつ返信が来たのかを残します。
興味のある内容
何に興味を持ったのかを短く書きます。
現在の状態
相談中、見積提出済み、検討中などを記録します。
次回連絡日
次にいつ連絡するのかを決めます。
次にすること
電話、資料送付、見積提出、打ち合わせなどを書きます。
メモ
相手の悩みや希望を残します。
この中で最も大切なのは、次回連絡日です。
相手が興味を持っていても、次に連絡する日が決まっていなければ、営業は止まります。
返信が来た後の基本的な流れ
小さな会社でも実行しやすい流れは、次のとおりです。
1.できるだけ早く返信する
詳しい回答に時間がかかる場合は、受け取ったことだけでも先に伝えます。
2.相手の相談内容を記録する
何に困っていて、何に興味を持ったのかを残します。
3.次の行動を決める
電話、打ち合わせ、資料送付、見積提出などを決めます。
4.次回連絡日を入れる
「落ち着いたら連絡する」ではなく、日付を入れます。
5.予定日に確認する
返事がなくても、約束した日に丁寧に連絡します。
この流れを毎回行えば、見込み客の取りこぼしは減らせます。
特別な営業技術よりも、約束を忘れないこと
営業というと、話がうまい人や、人付き合いが得意な人が成功すると思われがちです。
もちろん、話し方も大切です。
しかし、中小企業の営業では、もっと基本的なことが成果を左右します。
メールに早く返す。
相手の相談内容を記録する。
次の予定を決める。
約束した日に連絡する。
この当たり前のことを、毎回続けることです。
営業が苦手でも、記録と予定管理ができれば、十分に信頼を作れます。
反対に、どれだけ説明が上手でも、返信が遅く、約束を忘れる会社は選ばれません。
スプレッドシートだけでも始められる
見込み客の管理に、高額な営業管理システムが必ず必要なわけではありません。
Googleスプレッドシートに、次のような列を作るだけでも始められます。
| 会社名 | 担当者 | 返信 | 状態 | 次回連絡日 | 次にすること | メモ |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 株式会社○○ | 山田様 | あり | 見積提出済み | 7月20日 | 検討状況確認 | 採用ページに興味 |
| 有限会社△△ | 佐藤様 | あり | 打ち合わせ予定 | 7月18日 | オンライン面談 | 営業管理に困っている |
一覧で見れば、次に何をするべきか分かります。
次回連絡日を過ぎた会社を目立たせる設定にすれば、連絡漏れにも気づけます。
営業管理で大切なのは、きれいなシステムを作ることではありません。
今日、誰に連絡するべきか分かることです。
営業アシスタントが目指すもの
ビオス北海道の「営業アシスタント for 中小企業」は、営業を勝手に進める仕組みではありません。
営業先の情報を整理し、返信が来た相手を忘れず、次に連絡する日を分かるようにする仕組みです。
例えば、
- 返信が来た会社を一覧で確認する
- 次回連絡日を記録する
- 見積提出後の確認漏れを防ぐ
- 担当者が変わっても状況を確認できる
- 連絡が必要な会社を表示する
といった使い方ができます。
営業を自動化するのではありません。
興味を持ってくれた相手を、忘れないための仕組みです。
まとめ
返信が来た見込み客を取りこぼす会社には、共通点があります。
返信を後回しにする。
相手の相談内容を記録しない。
次にすることが決まっていない。
見積書や資料を送って終わる。
次回連絡日を決めていない。
担当者の頭の中だけで管理している。
断られるのが怖くて確認できない。
これらは、営業能力が低いから起きるのではありません。
管理の仕組みがないために起きます。
返信が来たら、できるだけ早く反応する。
相談内容を記録する。
次の行動を決める。
次回連絡日を入れる。
約束した日に連絡する。
この流れを決めるだけでも、見込み客の取りこぼしは減らせます。
せっかく興味を持ってくれた相手を、忙しさの中で忘れてはいけません。
営業で大切なのは、大勢にメールを送ることだけではありません。
返事をくれた一社を、大切にすることです。
次回予告
営業は才能ではない。仕組みで成果を出す方法
営業が得意な人でなければ、仕事は取れないのでしょうか。
実際には、営業が苦手でも、連絡、記録、フォローを仕組みにすることで、成果を出しやすくなります。
次回は、営業を個人の才能に頼らず、会社の習慣に変える方法を紹介します。