高価な営業システムを入れる前に、まず「忘れない仕組み」を作る
営業先をExcelやGoogleスプレッドシートで管理している会社は、決して少なくありません。
会社名、担当者名、電話番号、メールアドレス。
こうした情報を一覧にしておくだけでも、何も管理していない状態よりは大きな前進です。
しかし、営業先の数が増えてくると、ただの一覧表では足りなくなってきます。
「この会社には、いつ連絡しただろう」
「返信は来ていただろうか」
「次は、いつ連絡する予定だっただろう」
「名刺交換をしたまま、連絡を忘れていないだろうか」
このようなことを、一件ずつ思い出しながら営業を続けるのは大変です。
特に、社長自身が営業を担当している中小企業では、営業だけをしているわけではありません。
見積書を作る。
現場を確認する。
お客様からの電話に対応する。
請求書を確認する。
従業員からの相談を受ける。
毎日たくさんの仕事が割り込んできます。
その結果、本当は連絡しようと思っていた営業先が、少しずつ忘れられていきます。
営業で本当に問題なのは、営業が苦手なことだけではありません。
連絡するべき相手を忘れてしまうことです。
そこで役立つのが、Googleスプレッドシートを使った営業管理です。
営業管理に必要なのは、難しい機能ではない
営業管理という言葉を聞くと、大きな会社が使う高価な顧客管理システムを思い浮かべるかもしれません。
営業担当者ごとの売上予測。
商談の進み具合。
案件ごとの成約確率。
細かな分析画面。
確かに、営業担当者が何十人もいる会社では、そのような仕組みが必要になる場合があります。
しかし、1人から20人程度の会社で、社長や少人数の担当者が営業をしている場合、最初から多くの機能は必要ありません。
まず管理したいのは、次のような基本情報です。
- どの会社に連絡したか
- 誰に連絡したか
- いつメールを送ったか
- 返信が来たか
- 次にいつ連絡するか
- 現在どのような状態か
この情報が分かるだけでも、営業の抜けや漏れはかなり見つけやすくなります。
大切なのは、立派なシステムを入れることではありません。
次に何をするべきかが、ひと目で分かる状態を作ることです。
営業管理表は、2つに分けると使いやすい
スプレッドシートで営業を管理する場合は、すべての情報を1枚に詰め込むよりも、役割ごとに分けた方が使いやすくなります。
おすすめは、次の2つです。
1.企業リスト
企業リストには、営業先そのものの情報を登録します。
たとえば、次のような項目です。
- 会社名
- 担当者名
- メールアドレス
- ホームページURL
- 業種
- 提案したい内容
- どこで知り合ったか
- 接点や会話のメモ
企業リストは、いわば営業先の住所録です。
名刺交換をした相手。
紹介してもらった会社。
ホームページを見て気になった会社。
以前に取引があった会社。
今すぐ営業する予定がなくても、将来連絡する可能性がある会社を登録しておきます。
2.営業管理
営業管理には、実際に行った営業活動を記録します。
たとえば、次のような項目です。
- 会社名
- 担当者名
- メールアドレス
- 初回送信日
- 返信の有無
- 次回連絡日
- 現在の状態
- メモ
こちらは住所録ではなく、営業の進み具合を確認するための表です。
企業リストに登録されている会社の中から、実際に連絡した企業を営業管理へ移します。
この2つを分けることで、まだ連絡していない会社と、すでに営業を始めた会社が混ざりにくくなります。
「状態」を決めておくと、次の行動が分かる
営業管理では、「状態」の項目が特に重要です。
状態には、たとえば次のような選択肢を用意します。
- 未連絡
- 下書き作成済み
- 初回メール送信済み
- 返信待ち
- リマインド必要
- 返信あり
- 商談中
- 見送り
- 成約
状態を見れば、その営業先に対して次に何をすればよいかが分かります。
たとえば「返信待ち」であれば、しばらく待つ。
「リマインド必要」であれば、再度メールを送る。
「返信あり」であれば、内容を確認して返事をする。
「商談中」であれば、見積書や提案書を準備する。
営業先を上から順番に見直して、毎回状況を思い出す必要はありません。
状態を見ながら、必要な仕事だけを進められます。
次回連絡日を入れるだけで、営業は続けやすくなる
営業管理表を作るとき、ぜひ入れてほしい項目が「次回連絡日」です。
営業メールを送った後に返信がなかった場合、いつまで待つのかを決めておきます。
たとえば、初回メールを送った日に、次回連絡日を7日後に設定します。
7日後になっても返信がなければ、状況を確認してフォローメールを送ります。
ここで大切なのは、「覚えていたら連絡する」という方法にしないことです。
忙しい毎日の中で、1週間前に送ったメールを正確に覚えておくのは簡単ではありません。
次回連絡日を入力しておけば、記憶に頼る必要がなくなります。
営業を続けられる会社と、途中で止まってしまう会社の差は、営業力だけではありません。
次に連絡する日が決まっているかどうかです。
フォローは、しつこい営業ではない
「返事がない相手に、もう一度メールを送るのは失礼ではないか」
そう考える人もいるでしょう。
確かに、何度も繰り返し連絡したり、強く契約を迫ったりすれば、相手に負担を与えます。
しかし、丁寧な確認メールを一度送ることまで、必ずしも失礼とは限りません。
相手が返信していない理由は、提案に興味がないからとは限りません。
忙しくて後回しになった。
メールを見たが、返信を忘れた。
社内で確認している途中だった。
ほかのメールに埋もれてしまった。
このような可能性もあります。
ただし、フォローすれば必ず反応があるという根拠はありません。
相手の状況や提案内容によって結果は変わります。
そのため、フォローの目的は契約を無理に迫ることではなく、相手が判断しやすいように、もう一度だけ確認することです。
たとえば、次のような柔らかい文章にします。
「先日は突然のご連絡を失礼いたしました。ご多忙のことと存じますので、改めてご連絡いたしました。」
この程度であれば、押し売りの印象を抑えながら、提案を思い出してもらうことができます。
Gmailの下書きまで作れば、営業の負担を減らせる
スプレッドシートに営業先を登録しても、毎回メールを一から作っていては時間がかかります。
会社名をコピーする。
担当者名をコピーする。
メールアドレスをコピーする。
件名を入力する。
挨拶文を考える。
提案内容を書く。
この作業を何件も繰り返すと、営業を始める前に疲れてしまいます。
そこで、GoogleスプレッドシートとApps Scriptを組み合わせると、選択した会社のGmail下書きを自動で作成できます。
たとえば、企業リストの中から営業したい会社を選び、ボタンを押します。
すると、登録した情報を使って、Gmailに営業メールの下書きが作られます。
メールは自動送信しません。
内容を人が確認し、必要な部分を直してから手動で送ります。
この方法であれば、完全な自動営業ではありません。
間違った相手に送信する危険を抑えながら、面倒な作業だけを減らせます。
出会った状況に合わせて、挨拶文を変える
営業メールは、最初の一文で印象が大きく変わります。
名刺交換をした相手に対して、
「ホームページを拝見し、ご連絡しました」
と送れば、不自然に感じられます。
そこで、企業リストに「挨拶タイプ」という項目を作ります。
たとえば、次のように分けます。
- 名刺交換
- ホームページ
- 紹介
- 以前取引
- その他
名刺交換を選んだ場合は、
「以前に〇〇にて名刺交換させていただき、ご連絡いたしました。」
ホームページを選んだ場合は、
「貴社ホームページを拝見し、ご連絡いたしました。」
紹介を選んだ場合は、
「〇〇様からご紹介いただき、ご連絡いたしました。」
というように、接点に合わせて挨拶文を変えます。
文章のすべてを自動化する必要はありません。
最初の挨拶や会社名など、毎回繰り返す部分だけでも自動入力されれば、メール作成の負担は軽くなります。
返信確認も、表とメールを行き来しない仕組みにする
営業メールを送った後は、返信の確認も必要です。
しかし、営業先が増えると、Gmailと営業管理表を何度も見比べることになります。
「この会社から返信は来ていたか」
「返信が来たのに、表を更新していない会社はないか」
この確認作業にも時間がかかります。
Apps Scriptを使えば、Gmail内を検索し、返信が見つかった会社について、営業管理表の状態を「返信あり」に変更する仕組みも作れます。
もちろん、返信内容の判断まで完全に任せるのは慎重になるべきです。
自動返信や配信不能メールを、通常の返信と間違える可能性があるからです。
そのため、システム上で「返信あり」と表示された後に、人がGmailを開いて内容を確認する形が安全です。
自動化するのは、最終判断ではありません。
見落としを減らすための確認作業です。
スプレッドシートは、本当に営業管理に向いているのか
ここまで読むと、スプレッドシートだけで十分だと感じるかもしれません。
しかし、反対意見もあります。
営業先が何百社、何千社と増えた場合、スプレッドシートでは動作が重くなったり、情報が探しにくくなったりする可能性があります。
複数の営業担当者が同時に使う場合は、誰がどこを変更したか分かりにくくなることもあります。
また、細かなアクセス権限や詳細な売上分析、複雑な商談管理については、専用の営業管理システムの方が優れています。
つまり、スプレッドシートは、すべての会社にとって最終的な正解ではありません。
しかし、だからといって、最初から高機能なシステムを導入する必要もありません。
高価なシステムを入れても、入力されなければ意味がありません。
操作が難しくて使われなくなれば、営業管理は続きません。
まずはスプレッドシートで、
- どの情報を管理したいのか
- 誰が入力するのか
- いつ確認するのか
- どの段階で連絡するのか
という基本ルールを作ります。
その後、営業先や担当者が増え、スプレッドシートでは足りなくなった時点で、専用システムへの移行を検討すればよいのです。
小さく始めて、必要になったら広げる。
これが、中小企業にとって現実的な進め方です。
管理表を作って終わりにしない
営業管理表は、作ることが目的ではありません。
使い続けることが目的です。
最初から項目を増やしすぎると、入力が面倒になります。
営業先ごとに十数個も入力項目があれば、次第に更新されなくなるでしょう。
まずは、次の6項目程度から始めても構いません。
- 会社名
- 担当者名
- メールアドレス
- 初回送信日
- 次回連絡日
- 状態
必要になったら、提案内容やメモを追加します。
また、確認する時間も決めておきます。
たとえば、毎週月曜日の午前中に営業管理表を開きます。
次回連絡日を過ぎている会社を確認します。
返信が来ている会社を確認します。
今週連絡する会社を決めます。
一週間に一度でも確認する習慣ができれば、営業先が放置される可能性は下がります。
毎日長い時間をかける必要はありません。
大切なのは、短い時間でも定期的に確認することです。
営業を自動化するのではなく、営業を忘れない
営業支援ツールというと、メールを大量に自動送信する仕組みを想像する人もいます。
しかし、中小企業の営業では、数を送ることだけが正解ではありません。
名刺交換をした相手。
以前取引があった会社。
紹介してもらった会社。
ホームページを見て、本当に役に立てそうだと感じた会社。
こうした相手に対して、関係や状況に合わせて丁寧に連絡することが大切です。
スプレッドシートとGmailを使えば、人との関係を残したまま、忘れやすい部分だけを仕組みにできます。
メールを書くのは人。
内容を確認するのも人。
送信するのも人。
システムは、次に連絡する相手を教え、抜けや漏れを減らします。
営業を機械に任せるのではありません。
人が営業を続けやすくするために、仕組みを使います。
まとめ
営業管理を始めるために、最初から高価なシステムを導入する必要はありません。
Googleスプレッドシートでも、次のことは管理できます。
- 営業先の情報
- メールを送った日
- 返信の有無
- 次回の連絡日
- 現在の進み具合
- 次に行うべき仕事
さらにApps Scriptを組み合わせれば、Gmailの下書き作成や、返信確認の負担も減らせます。
ただし、スプレッドシートを作っただけでは営業は変わりません。
入力する。
確認する。
次回連絡日を決める。
定期的に見直す。
この流れを続けて、初めて営業管理が仕組みになります。
営業は、一部の才能がある人だけができる仕事ではありません。
連絡する相手と、連絡する日を忘れない仕組みがあれば、営業が苦手な人でも少しずつ続けられます。
合同会社ビオス北海道では、中小企業向けに、GoogleスプレッドシートとGmailを活用した営業管理の仕組みづくりを支援しています。
「営業先をExcelで管理しているが、連絡漏れが増えてきた」
「名刺交換をしても、その後の連絡が続かない」
「高価な営業システムを入れるほどではないが、今の管理方法には限界を感じている」
そのような場合は、現在の営業方法を整理するところから始めてみませんか。
営業を自動化するのではなく、営業を忘れない。
小さな会社でも続けられる営業の仕組みを、一緒に作ります。